あなどれない少女

私だけが知っている
私だけが知っている

こどもはあなどれません。電車の中でスケッチしていても大人が気づくことはまずありません。そんな変なことをするひとが電車に乗っているはずがありません。とうぜん新聞やテレビで話題になったりもしません。

ところがこどもは違います。初夏の休日、京王線で高尾山にいったとき楽しそうな親子を目撃。さっそくスケッチをしていると左端のお姉ちゃんはあやしい人に気づきます。こちらは、サングラスに野球帽、ヘッドフォンをしているのでみるからの怪しい風体ですが、まわりのひとはまさかスケッチをしているとは思いません。

おねえちゃんは、いもうととおかあさんに自分の発見した今そこにある危機のことを耳元でささやきますが、信じてもらえません。なんと不条理な世の中でしょう。ふたりは能天気にこれから行く新緑の高尾山のことを話しています。おねえちゃんは目の前の不審者のことを一生懸命伝えようとしますが、しかし伝わりません。

たしかにこどもは変な常識にとらわれないので、とても鋭い勘が働くことがあります。おとなになるにしたがってそんな大切な勘が常識というノイズに埋もれてしまうのはなんとももったいないことだなと思った次第です。