五島列島最大の島、福江島。
市街地から自転車で10分ほど走ると、六方(むかた)という小さな浜辺に着きます。
黒潮が運ぶ透明な海。エメラルドグリーンに輝く水面と、幾重にも重なる島影をスケッチ。
いまは静かな入江ですが、この場所に様々な人たちが上陸し開墾し生きていました。
ここは、8世紀ごろ鬼岳火山の麓の村から移り住んだ人々によって開かれた土地。今でも小さな川の河口に湿地や干潟が広がり、水にも恵まれていて、当時も稲作に適した場所だったのでしょう。
地名の由来も興味深く、六軒の家があったことから「六方」とも、あるいは干潟の地形に由来するとも言われています。
12世紀には、壇ノ浦の戦いで敗れた平家の落人がこの浜にたどり着き、自害したという伝説が残されています。いまもその御霊を祀る祠がひっそりと佇んでいます。
さらに戦国時代にはクリスチャンの教会が建てられ、江戸時代には五島藩の要請によって現在の長崎県の西彼杵半島(にしそのぎはんとう)から多くの開拓移民がこの入江に上陸しました。
彼らは五島各地の開拓に携わるとともに、長く途絶えていたキリスト教復興の礎を築いたとも伝えられています。
スケッチを終えて浜辺を眺めると、今日はウェットスーツ姿でシュノーケリングを楽しむ女子が目に入ります。
1300年前の開拓民も、平家の落人も、隠れキリシタンの移民たちも、きっと同じ海を見つめていたのでしょう。
西の果ての小さな入江には、時代を超えてさまざまな人々を受け入れてきた記憶が静かに残っています。
そんな土地の物語にふと出会うことができるのも、6色ミント缶スケッチの楽しみです。

