青梅の古民家の魅力

画家の向井潤吉は1960年代古民家を沢山描きました。日本の原風景が次々と失われてゆく、その焦燥感から晩年、古民家を数多く描いています。

世田谷区の向井潤吉アトリエ美術館で彼の作品に出会うことができます。古民家の風景画は、どこか郷愁を誘います。

今から半世紀以上前、千葉県鴨川市で茅葺の古民家を借りて住んでいたことがあります。

83歳で亡くなった父曰く、じいさまとばあさまと一緒に過ごしたかったので広間のある、今で言う、4LDKの農家の藁葺き屋根の古民家を借りたのだそうです。

江戸時代から明治時代にかけて作られた鴨川の農家の家には、馬小屋(牛小屋)と納屋がついていました。子どもの頃は格好の遊び場でした。

屋根裏は、機織りや、養蚕用の道具が残っていたのを覚えています。

今日、訪れた東京都青梅市の古民家は、青梅市立の郷土博物館付属の野外展示の旧宮崎家住宅です。

江戸時代後期の建物ですから、こどもの頃過ごした懐かしい我が家とほぼ同じ時代の建物です。

暑い真夏の季節ですが、建物の中はちょっとひんやりとして、囲炉を炊いています。

藁葺きの家は、煙をたいていないと草でできた屋根は、カビや害虫ですぐに痛んでしまいます。

夏でも、囲炉裏の火を絶やさないようにしています。夏に囲炉裏の香りを嗅ぐと懐かしい気持ちになります。

玄関を入ってみると、意外と小さな土間と広間です。農家の民家ですと収穫した農作物の加工や保存作業用の大きな土間と広間があると思っていたのですが、それが小さいのです。

この民家がもともと建っていた場所は、山奥の沢沿いの南斜面で、生業は林業と石灰などを採掘だったそうで、なるほど平地の稲作用の民家に比べて少しサイズが違うのだなと、発見です!

青梅市の多摩川沿いの公園に移築されたのが1979年。藁葺き(わらぶき)屋根には苔がむしています。そこから草も伸びていて、夏の日差しに輝いているのを描きたくなります。

以前、伊勢神宮が20年に一度、建物を建て替えるお祭り、遷宮(せんぐう)の前に参拝したことがあります。ヒノキの皮を重ねて屋根にする檜皮葺き(ひわだぶき)の屋根も、苔生し、草が生えていた景色と重なります。

画家の向井潤吉が求めていた古民家の風景は、もう現地には残っていませんが、画家が盛んに懐かしい風景を残していた頃、各地でこ民家を移築し展示保存する活動が盛んになります。

向井潤吉は、油彩で精緻な古民家と里山の風景を残しました。油彩と同じように細部と暗い背景に明るい草や苔を書き込むには、アクリルガッシュが最適です。

わたしの息子が小学校と中学に通っていた時に使用していた絵具は、不透明水彩(ガッシュ)ではなく、アクリルガッシュで、紙以外に木や石など様々な媒体に色を置くことのできる絵具です。

今日の0号の画用紙に描いている古民家もアクリルガッシュです。重ね塗りや、下地やにじみを気にせず何度でも描き重ねることができる画材で、油絵の具のようなにおいもなく、屋外のスケッチには最適です。

欠点といえば、やや乾燥が早いこと。真夏の炎天下では、絵の具が30分ほどでカチコチになってしまいます。

水に薄めて使うと、透明水彩のような絵になり、水を混ぜずに描くとアクリル画や油絵っぽくなる、表現力のある不思議な画材です。

不透明水彩の魅力を発見したのは、最近のことです。難しいのは、透明水彩のように画用紙上で混色しながら描くことができずらいところでしょうか。

ちゃんと色の彩度、温かさ冷たさ、濃淡を混色しながら作ってゆく必要があり、なんか偶然にいい感じになっちゃったというのがあまりないのが、アクリルガッシュの使用感です。

茅葺の屋根の家に住んだことのある実体験と一緒に、炎天下の中、絵の具の乾燥と戦いながら、苔むす屋根を楽しみながら懐かしい風景を描くことができました。

青梅市の旧宮崎家住宅 アクリルガッシュ(F0サイズ)

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