大正13年(1924年)に建造された静かな谷あいにたたずむ名栗川橋は、埼玉県最古の鉄筋コンクリート橋です。飯能市教育委員会発行の「はんのう文化財マップIIIー原市場・名栗地区ー」の表紙にも紹介されています。
全長31.4m、幅3.4mと小ぶりながらも堂々とした風格を持つこの橋は、現役を退いた今もなお、地域住民の生活を支える大切な存在です。以前、著者は橋梁調査の仕事で数多くの橋をスケッチした経験があります。
「橋梁調査」では、橋の傷み具合や、ひび割れの箇所、橋脚が川の流水で掘れて不安定になっていないかといったことを点検しレポートを作成する仕事です。調査業務では、自由な角度で印象的なスケッチは求められません。横から見た絵と上から見たスケッチにメモを添えてレポートします。
でも、今日は測量調査のような縛りもないので、自由な角度で印象的な橋をスケッチしてみましょう。
橋は、どの角度から描くのがいいでしょう?使う人間に視点だと上から目線ですが、下から見ると、橋の本来の役割である「支える」仕組みを観察できる楽しさがあります。
名栗川橋は、円弧を描いたアーチ橋。川の中に柱を立てずに、重たい道路を支えることができるのがアーチ橋のすごい所です。紀元前3500年ごろのメソポタミア文明の遺跡からもアーチ橋は発掘されている古い技術です。
この橋ができる前には両岸をつなぐ木製の橋がありましたが、明治43年(1910)に大洪水で流され、両岸の交通は寸断されてしまいます。大水でも流されない橋をとの思いで建設されたのがこのアーチ橋です。
どのアングルから橋を描くか?
日差しが少しづつ傾く午後の限られた時間のなかで、ベストなポジションを探すのも、屋外スケッチの醍醐味です。河原に降りてみると、下草は刈り取られて、スケッチ用の三脚を立てることができるスペースが確保できました。
下から見上げたアーチ橋が西日に照らされて柱から漏れる光は、まるで大聖堂のステンドグラスのように荘厳で幻想的な風景を作り出します。傾いた西日に照らされて金色に輝く欄干の様子をスケッチに収めまることができました。

