夏が来ると思い出すのは、焼岳から奥穂高岳へ単独で縦走しながら山岳スケッチしたことです。それはココロオドル体験でした。
7月下旬はまだ梅雨明け前。小雨のなか、初日は上高地の明神池から焼岳山荘を目指します。
焼岳山荘は、こじんまりとした山小屋で、宿泊者も数名。夕食の流れからアルコールも入り、みな打ち解けて話が盛り上がります。
ちょうどハーモニカを持ってきていたので、「いつかある日」をみんなで合唱して、外に出てみると満天の星空です。
どんな流れからだったか忘れてしまいしましたが、一緒に宿泊していた人たちと、山小屋のご主人を誘って、焼岳山頂へのナイトハイクを決行することに。
翌朝は、再び雨。昨夜の楽しい思い出を後に、天狗岳を目指します。雨は降ったり止んだりを繰り返して、ずぶ濡れです。
天狗岳山頂を目指してガレ場を歩いていると、黒色の新品の水彩ペンが落ちています。誰が落としたのだろうか?と思いながら拾い上げます。
雨の中、ほとんど視界のない稜線を歩いて、ようやく天狗岳山頂にたどり着いてみるとどうでしょう。
梅雨前線が通過したのか、絨毯を巻き取るように、西から一気に雲が消えてゆきます。
すると、突然、眼前に巨大な見上げるような岩の壁が姿を現します。その山容の神々しさと迫力をスケッチブックに一気に書き上げたのが表紙の絵です。
水彩ペンと水彩絵の具で描いたのですが、この水彩ペンは尾根道のガレ場で拾ったものです。
水彩ペンだと、山の輪郭が適当ににじんで、まるで山旗雲がたなびいているような表現になります。偶然ですが、とても愉快な気分です。
しかし、これから天狗岳から描いた奥穂岳のその巨大な岩壁を登らなくてはいけません。あまり、長居はできません。
ほんの15分、無我夢中で描いて、奥穂岳山頂を目指します。いろいろな偶然がないとその風景に出会いえない。そんな2006年7月の山旅でした。


“焼岳から奥穂高岳へのスケッチ縦走” への1件のフィードバック
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